Mughal-e-Azamを観ました♡

Mughal-e-Azam」(ムガレアーザム)と言えば、インド、パキスタンで知らない人はいない1960年の不朽の名作映画です。日本では、2008年にエルメスがインドをテーマに展開していた時に「偉大なるムガル」という邦題で上映され、このエルメス×「偉大なるムガル」は、エレガントな企画として、日本でも結構な話題になっていました。

その映画が2017年の夏以降(?)、ミュージカルとしてデリーで初演され、続いてムンバイーでも上演。そして、約半年後の2018年2月にデリーのジャワーハルネヘルー・スタジアム(JLN Stadium)で再演されました。昨年夏のデリー公演は、一時帰国で観ることができなかったのですが、今回の再演で漸く観ることができました。本日の公演は、本作108回目の公演だったそうです。

監督はヒンディー語演劇界で著名なフェローズ・アッバース・ハーンさんで、ムンバイーのプリトゥヴィー劇場の初代芸術監督だった方だそうです(同劇場は、映画中アクバル皇帝役を演じるプリトゥヴィーラージ・カプールに因んで創設された劇場です)。上演前には、映画のプレイバック・スィンガーの一人、ラター・マンゲーシュカルさんから、映画の音楽を担当されたナウシャードさんとのエピソードなどを含む音声メッセージが流れました。

▲JLNスタジアム外観
▲Box Office(ゲートNo.19の脇にありました)
▲開場前
▲会場入口

▲ホワイエ


上演時間は、2.5時間前後。途中15分程度の休憩がありました。映画がどのように舞台になるのか、全く想像がつきませんでしたが、全体的にダイナミックで素晴らしく、期待通りの作品でした。外国人の観客も多く目につき、絶対に海外公演すべきプロダクションだと思いました。

プロジェクション・照明

全編を通して、背景や動画のプロジェクション、照明の演出が最新の技術が駆使されていて非常に凝っていました。この絶妙なプロジェクションによって、シーンの移り変わりがナチュラルでスムーズでした。

台詞

全編ウルドゥー語。簡単な英語字幕が舞台の両脇に投影されていました。難しい単語が続くときは、時折字幕を観ましたが、大体耳で聞いて舞台に集中できました。…というか、ナレーション以外は映画で聞き覚えのある台詞が多かったです。特に、映画と同じセリフの部分は、どうしてもオリジナルの映画の中の俳優の声や表現が頭の中で先行しましたが、舞台には舞台にあった適切なトーンや抑揚に調整されている感じがしました。ちなみに、プログラムを拝見する限り、アクバル皇帝、マーン・スィング、スライヤー以外の役は、ダブルキャストだった模様なので、別のキャストだとまた異なった印象を受けそうです。

音楽と衣装

個人的にはオリジナルの映画の古典的な感じの方が好きでしたが、現代の観客のテイスト合うよう、敢えて現代風にアレンジしたのかもしれません。音楽は、映画の挿入歌の他にも、モイーヌッディーン・チシュティーに関するカッワーリーや♬Ae Ri Sakhiなどトゥムリーの変曲されたものなども何曲か挿入されていました。アナールカリー役とバハール役を演じたネーハー・サレガムさんと、プラティバー・スィンさんは、演技だけでなく歌も生歌で役に臨んでいらして、美声を惜しみなく披露されていました。

ダンス

何度もカメラのアングルが切り替わり、大人数のダンサーが異なるフォーメーションを織りなし続ける映画のフレームの世界が、不思議なくらい違和感なく舞台で再現されていました。やはり注目してしまったのは、マハーラージ師匠の叔父様・故ラッチュー・マハーラージさん振付の名曲♬Mohe Panghat Peと、♬Pyar Kiya To Darna Kyaでした。♬Mohe~は、舞台で沢山のことが置き過ぎていて、全体を終えなかったのですが、かえってそれが映画っぽさを出していた感じがします。

対して♬Pyar~はユニゾン部分も多く、全体が見やすい振付でしたが、最初のアナールカリーのソロは、演出からの推測ですが、アナールカリー役のネーハーさんではなく、バックのカタック・ダンサーのうちの誰かが踊っていたようでした。ダンサーさんたちも、一人ひとりが素晴らしく、こんなに揃ったカタックを観たのは初めてかもしれないくらい一糸乱れぬ動きでした。クラスメイトも何人か出演していたので、こんなに素晴らしいステージを踏んでいる彼女たちを、嬉しく誇らしく思いました。

▲カーテンコール(カーテンコール以降、撮影解禁)


今回、初めてJLNスタジアムの劇場で観劇しました。2,000席前後の大きな会場観客でしたが、チケット捥ぎりや誘導係が、必要なだけ配置されていて、全くが混乱なく、入退場や休憩時間も、売店やトイレなども混雑することなく、キチンとオーガナイズされていて驚きました。今回の公演がチケット制の公演だからかもしれませんが、本当にビックリしました。会場アナウンスも無駄がなく、舞台以外の面でも国際的水準を満たしていました。

▲チケットもぎり場。

会場スタッフは、皆黒いクルターで笑顔でテキパキと迎えてくれました。また、大半のスタッフが映画に因んで「ナマシュカール」ではなく「アーダーブ」で迎えてくれたことに粋な計らいを感じました。

▲売店。ここは受取専用カウンター。オーダーは別カウンターでした。


残念なのが観劇マナー。開演前に、携帯電話の機内モードがオフを促すアナウンスの際、「これまでの公演では99%携帯が鳴っていません。上演の質が妨害されるだけれはなく、役者の使用するマイクが繊細なのでその電波を妨げないように」という理由までが、詳細に説明されたにも関わらず、前半で2回、着信音やアラームが鳴りました。そして、休憩時間のアナウンスでも「前半で既に2回、着信音が聞こえましたね、後半はご協力を」とジョーク混じりに注意喚起されましたが、やはり後半でも着信音が鳴り、画面の点灯も結構頻繁に目につきました。さすがに通話をしている人はいませんでしたが、6,000ルピー以上の座席の人々のマナーがこれだと、マナーの面で世界水準を達成できる日は遠いな…と思ってしまいます。

また、多くの観客は、映画の台詞や歌を覚えているので、先の台詞を口に出してしまったり、歌を一緒に歌い始めたり、身を乗り出したり、足で前の座席を蹴ってリズムを取ったり…このあたりの感覚ももう少し変わって欲しいなと思いました。

とはいえ、全体的に、オリジナルの映画が適度に適切に現代の演劇の世界に変換されている印象を受けました。来週まで追加公演が決まったようなので、また来週末も観に行きたいくらいです。今回の席は、2ブロック目の2列目中央で舞台全体が見える良席だったのですが、次観るならもっと舞台間近で観たいなと思います。

▲会場では、看板の前などで、映画に合わせてアーダーブ(写真のような手で挨拶する)のポーズで、皆んな写真を撮っていたので私も真似してみました。

▲お土産ブース。マグカップやポスターなどを販売していました。

私がこの原作映画に出会ったのは大学生の時。ウルドゥー語の恩師が、拡張高いウルドゥー語の台詞のやりとり、ストーリー、音楽に超太鼓判を押され、熱弁を繰り返していらしたことに加えて、もともと白黒で一部カラーだったこの映画が、最新技術により完全カラー化され復刻上映&DVD発売するということが当時ニュースになっており、授業でそのBBCウルドゥーのニュース記事を読んだことも印象に残っています。(※この映画や映画のカラー化についてはこちらに詳しいです。)

映画内のどの音楽も素晴らしく、音楽を担当されたナウシャードさんが2006年に亡くなった時も、非常にショックでした。挿入歌のうちいくつかの曲中で踊られている舞踊はカタックで、当時南アジアの文化の興味を持ち始めていた私は、音楽のシーンを何度も何度も観ていました。のちに、その振付がマハーラージ師匠の叔父様ラッチュー・マハーラージさんがなさっていることを知り、益々放っておけない映画となりました。

ウルドゥー語の世界やカタックに導いてくださった恩師や仲間と一緒に、この作品を拝見できたら、もっと良かったのになと思います。

カタック・ダイアリー ♡ Kathak Diary

東京、デリー、ロンドンなどでカタックの研鑽を積んだカタック愛好家のウェブサイト♡

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